30冊目:「山の音」 著者:川端 康成
【遊びに来て頂きありがとうございます!】
昭和の文豪、川端 康成先生の名作「山の音」でございます。
川端作品の後期作品で長編小説でございます。
戦後間もない鎌倉を舞台に東京の会社に通う尾形信吾、妻の保子。そして、息子の修一と妻 菊子。
復興に向う日本を背景に、尾形一家の人間模様が描かれております。
なんといっても、キープレイヤーは信吾と菊子。
信吾からすれば、菊子は息子:修一の嫁。
この息子:修一。戦後から復員しており、心に深い傷が癒えません。そんな境遇の中、
菊子の愛情を無視するかのように、愛人を作ります。
菊子は修一の浮気を知り、毎日の生活に暗澹とします。
そんな姿を信吾は不憫に思い、菊子の事を慮るようになります。
そんな暗澹たる日々の中、菊子は妊娠します。
しかし、修一の愛人問題、自分自身への葛藤が菊子の精神状態を崩壊させ、
堕胎します。
戦後の日本の世界と、ごく普通の家庭を描きつつも、光と苦悩を掛け合わせいくような
この作品に私も深い感動を覚えました。。。
信吾も齢62歳。不思議と耳鳴りなのか分からないような、大きな「地響きのような山の音」が聞こえ始めます。
この「山の音」が信吾は自らの「死」が近づいているのだと、感じます。
川端作品の文脈が好きです。
自分の身の回りにある物を表現する際の誰にも真似出来ないような言葉の紡ぎ方。
「山裾から垂れた薄の長い葉に、雨の玉が次々と早く流れていた」
自然の一連の所作を見事に表現して頂いております。
数多い川端作品の中でも、名作と呼ばれる由縁なのでしょうね。。。
それでは。
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